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乾食の種類を知る
次に、主に高温で発生する乾食について知っておきましょう。
高温酸化
湿食のような腐食性の因子が特段ない雰囲気、例えば大気中であっても一定の温度に長時間曝されると酸化し損耗してしまうことを高温酸化と呼び、炭素鋼では黒サビ他でよく知られています。
一方、ステンレス鋼は堅固な酸化被膜を生成するクロムの含有量が多いため、炭素鋼よりは高温まで腐食が進行しないとされます。しかし、800℃以上になるとこの被膜も剥落し、腐食が進行して問題となります。
こうした高温腐食は水蒸気や二酸化炭素の雰囲気でも起こることが知られています。
高温酸化を受けたステンレス鋼の表面の例
ステンレス鋼の高温酸化の進行度合いを示す断面組織の例
高温腐食
酸素の存在に依らない高温での腐食現象には下記のようなものがあります。
高温ガス腐食
液体の沸点を大きく超えた「ガス」との接触によるさまざまな腐食現象があります。
硫化腐食
鋼材が、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料に含まれる硫黄化合物が燃焼した際に生じるSO2やH2Sガスにより、金属表面に鉄の硫化物を生成して腐食する現象です。
サルファーアタック
ニッケル合金が、一定の温度域(硫黄濃度や合金組成で異なる)において、ニッケル硫化物が関わる低融点の共晶物を生成して割れなどを生じる現象です。
浸炭
炭素を多く含む雰囲気において、金属組成中のクロムやチタンなどと結びつき炭化物を生成し腐食が進行する現象です。クロム欠乏層で発生するステンレス鋼の粒界腐食と同様に進行することとなります。
窒化
アンモニアや窒素ガス雰囲気において、窒素化合物が金属表面に吸着し、金属の窒化物を生成し腐食が進行する現象です。
高温ハロゲン腐食
塩化物などを多く含む合成装置やゴミ焼却炉などで、金属がハロゲン(塩素、フッ素、塩化水素、ヨウ素、臭素など)化合物を生成し腐食が進行する現象です。
溶融塩腐食
ここまでは主として雰囲気ガスとの反応によるものですが、燃焼灰やアルカリ硫酸塩による腐食も知られています。
バナジウムアタック
バナジウムを多く含む重油の燃焼灰(V2O5)による現象で、マグネシウムやカルシウムの化合物を添加して付着灰の融点を上げる方法が取られています。
アルカリ硫酸塩腐食
燃焼により生成したアルカリ硫酸塩(Na2SO4)が金属表面に付着・溶融し、硫化や酸化を経て腐食が進行する現象です。
参考文献:Wikipedia (Wikimedia Commons)、ステンレス鋼の高温特性