第 七 話 「国家規格」は著作権の夢を見るか?

 技術屋にとってなくてはならないもの、その一つがJIS(日本産業規格)でしょう。JISは、お客との会話、技術文書の作成、その他もろもろに多用され、その理解と周知のレベルがメーカーの「質」を決める、と言っても過言ではないはずです。「おい、このJIS、大事だから覚えとけよ」と上司や先輩に指示指導された経験は誰しもあるもの。なので常に手元に置きすぐに参照できるようにしたい、と考えるのも自然なことです。ところが。

 JISには「著作権」があります。
日本産業規格等に関する著作権の取扱方針について
 法人が冊子体で購入しても、社内での複写や共有、そして翻訳ですら無断ではできません。
よくわかる工業規格の著作権と使い方
 一方、「閲覧」だけであれば下記で行うことができます。(ダウンロードや印刷は不可)
JIS検索

 さて、いかがでしょうか?「ちょっと厳しすぎないか」とは思いませんか。
 はい、そんなこともあろうかとWEBで検索してみました。すると、同じような疑問を抱き異議を唱える、様々な人がいることがわかりました。
JIS(日本工業規格)に著作権ってあるんですか?
ウィキペディア「日本産業規格」

 カンコツはこう考えます。
 産業規格の使命。それは広く理解され、運用され、結果的に社会に貢献することにあると思います。国の見解にあるよう、規格の執筆者たる有意のエンジニアの著作権とその権益を保護すべきなのは当然ですが、業法でも引用されるこうした規格の頒布が過度に制限されるのはいかがなものか。関わる執筆者には相応の公的報酬で報うとして、規格の取り扱いそのものはもっと使用者に委ねて良いのでは、と思うのです。
 現にこうした制限が壁となるためか、手軽に買えるはずのハンドブックですらまめに最新版に買い換えているのは大会社くらい。その結果、誤作やあらぬ諍いが起きるとしたら・・・。決まりは決まりでしょうが、現実もまた現実、やがてなし崩し的にルール破りが横行することも懸念されます。
 その昔AppleがOpen Architectureを標榜し急成長したのを皮切りに、今やAPI連携の時代です。こうしたIT時代の新常識も念頭に、国にはより柔軟な対応を望みたいと思います。

 最後に、カンコツが贔屓にしているサイトを一つご紹介しておきます。とある自治体でここが参照されるほどメジャーな情報源となっています。
日本産業規格の簡易検索

悪法もまた法なりといえども
良法をこそ疾く知らしむべし

2022年4月26日

きいてないよー!

この雲に乗せて

六法全書