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第 十三話 タイムマシンにお願い
カンコツは昭和の生まれです。そろばんに親しみ、計算尺に触れ、電卓に感動した世代です。「電子計算機」なるものに触れたのは大学に入ってから。大量の穴あきカードの束を吸い込ませると円周率の計算ができることを知り驚きました。社会人になると世はパソコン(PC)ブームのとばっ口。なんと一人ずつにコンピュータが配られると聞いて激しく興奮したことが思い出されます。
やがてその面白さに目覚めたカンコツは、なけなしの貯金を叩いて「おうちパソコン」を大人買いしプログラミングの真似事を始めました。当時、PCそのものにデータ記憶機能はなく、作ったプログラムはまめにカセットテープ(!)に音情報として録音するしかありませんでした。この録音する間が冷や汗もの。ちょっとした振動や雑音が入れば即「プチッ」といういやな音と共にレコーダーは停止、長時間録音の労苦の終焉を冷酷に告げます。さらにこれに気づかずうっかりPCの電源を切ってしまったら根こそぎ水の泡、ということに。こんな憂き目は数え切れないぐらいほどでした。
そんなカセットテープもフロッピーやCD、さらにはハードディスクに取って代わり、ついにはこれらが内蔵されたPCが登場しました。そして、画面を内蔵し出張やレジャー先まで持ち運べるラップトップの出現は、大きくライフスタイルまで変えることになったのです。おかげで残業も大きく減り、私生活も充実し・・・と言いたいところですが、結局「風呂敷残業」がやりやすくなっただけのような印象を持つのは私だけでしょうか。
PC同様テレビの録画データの保存容量も飛躍的に増大し、今やいったん録画した全番組の中から選択できたり、PPVもしくは無料配信でいつでもどこでも視聴できる時代となりました。こうなると「データやメディアの価値っていったいなんなんだろう」と素朴な疑問も湧いてきます。
さて、データの保存機能といえば、わが愛機のMacにはTimemachineという機能が付属しており、誤って変更前のファイルを保存してしまったり、どこからデータがおかしくなったのか?などを調べるのに威力を発揮します。これはこれで大変重宝なのですが、間違えて消してしまっても記憶を辿りつつ書き直すと、かえって良いものが出来上がることもままあるので不思議です。
一方、感情の赴くままの勢いでメールを書き上げすぐ送信するのではなく、一晩寝かせて『時の氏神』が現れるのを待つと名文が出来上がる、などという先達の教えもあります。
なんでもタイムマシンに頼ると感性は劣化します。『First Takeの全集中』は大切にしたいものです。
好きな時代に行けるわ
時間のラセンをひと飛び
タイムマシンにお願い
「タイムマシンにお願い サディスティック・ミカバンド」
2024年12月7日