第 十四話 エコエコアザトク

 今年就任したトランプ米大統領の矢継ぎ早の衝撃的な言動に世界が振り回されています。相互関税、アンチDEI、移民の排除、教育省の廃止、ウクライナ大統領との口論・・・毎日、毎週、気が休まる時もないほどです。

 その中でも看過できないのはパリ協定からの離脱意向。確かに「アメリカ・ファースト」とは言い難いスキームなのかも知れませんが、積年の研究成果や多国間で築き上げたコンセンサスを一気に踏み躙るような振る舞いはいかがなものかと。現にお膝元だってハリケーン被害の激甚化、異常な旱魃や森林火災の先鋭化などの天災地変は、彼お得意の「フェイク」の一語で封じてしまうのはかなり無理があると言え、ましてや「(化石燃料を)掘って掘って掘りまくれ(drill, baby, drill!)」などと煽り立てているようでは、「リアル曲学阿世」の謗りを受けても仕方ないのでは、と思えてしまいます。

 しかし、DEIや環境保護などのムーブメントが新たなビジネスチャンス創生のため「あざとく」喧伝され、今やその副作用が社会悪としてハイライトされてきたのもまた事実です。例えば、スポーツ界における性同一性の安易な容認、登用におけるマイノリティの過度な重用、そしてそれらの是非を煽るSNSでの誹謗中傷の跋扈やそれに伴う刃傷沙汰、などです。
 中でも、過度なエコロジー重視の政策への傾倒は、特に欧州における理系学生の環境工学志向を招き、やがてカーボンクレジットやESG投資などといった文字通りのエコシステムを生み出すに至りました。これはさながらドットコムバブルで職を失ったITエンジニアが「金融工学」に鞍替えしさまざまな金融商品を生み出した「あざとさ」を彷彿とさせ、CO2排出量規制で劣勢に立つ新興国に「結局金儲けかよ」と見透かされているような気がします。

 一方、スターバックスは、バイデン前政権の意を汲んでサステナブルを標榜する高邁な宣言と共にいち早く紙ストローを導入しましたが、昨年末にプラスチックに回帰しました。時系列的にはトランプの紙ストローを廃止する大統領令より前に下された決断のようですが、こうした「あざとさ」を嫌っていたトランプが昨年11月の大統領選で勝利したのを見たスタバが先回りしたのでは?と私には思えてなりません。一応バイオマスであると釈明はしていますが、あれだけ騒がれたエコビジネスがこうあっさり剥落するかと思うとちょっと興醒め感すら感じてしまいます。

 こうしたマネーゲーム・プレイヤーのリバランスはともかく、年々深刻さを増す環境破壊に悲鳴を上げる地球に目を背けることは決して許されないでしょう。「神の手」に背かぬよう、少なくとも我々は精進を続けたいものです。

エコエコアザラク
エコエコザメラク

 その昔少年漫画で「エコエコアザラク」というのがありました。悪行を懲らしめるホラー仕立ての怪作でしたが、「あざ楽」なり「あざ得」を懲らしめる新たなストーリーのネタにはなりそうな気がしています。

 

2025年4月1日

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