- ホーム
- 基礎知識
- ニッケル合金の選びかた
- 許容引張応力、比強度をみてみよう
許容引張応力、比強度をみてみよう
さて、材料の強さ=許容引張応力、比重、比強度と数値が出揃いました。ここで各合金を比較してみましょう。
許容引張応力
まずは強度の指標となる許容引張応力を見てみましょう。
インコネル
まず目につくのはインコネル625が広範囲な温度域で高強度を有していることです。625には焼きなまし材(A)と固溶化処理材(S)がありますが、後者は875℃の高温まで使用することができます。600にも高温での強度を重視した熱間圧延材(H)と加工性を重視した焼きなまし材(A) がありますが、どちらも650℃の高温まで使用可能です。
ハステロイ
ハステロイも高い強度を示しますが、クロムを含まないB-2はC-22を凌ぐ強度を示すものの上限温度は450℃までとなっています。一方、C-22は700℃までインコネル並みの高温強度を示しています。
インコロイ
強度はSUS304とほぼ同様ですが、比較する合金群の中で最も上限温度が高いのが特長と言えるでしょう。インコネル625同様焼きなまし材(A)と固溶化処理材(S)がありますが625℃以上は強度は同じとなります。
純ニッケル
純ニッケルは以上のニッケル合金と比して強度は低く、強度材として用いる場合は注意が必要なことがわかります。ただし、インコネルなどと同等の高温まで使用できるのも特徴です。
モネル
概ねSUS304やSUS316Lと同程度と言えますが、450℃以上で急減します。ただし、316Lよりは高温まで使えることとなっています。
純チタン
どの温度域においても、どのステンレスやニッケル合金よりも低く、上限温度も最も低くなっています。
ステンレス
304は比較的広範囲に使用できることに加え、一部のニッケル合金より強度も上回っています。310Sは耐熱用途ですが高温域では寧ろ304より強度が低く、強度より耐高温腐食の要素が主であると言えます。一方、316Lは一部雰囲気での耐食用途に特化していますが、強度も上限温度はさほど高くありません。
比強度
比強度は、許容引張応力を比重で除した値なので、比重が軽い純チタンの評価が最も大きく変わり、常温域においてステンレス他と遜色ないことになります。ただし、高温になるにつれ強度が急降下するためメリットも薄れてきます。なお、純ニッケルは他の合金群と比重はほぼ変わらないので比強度としても強弱関係はほぼ同じとなります。
SUS304との比較
SUS304は800℃まで許容引張強度が示されているため、広範囲に他の合金群と比較することができます。そこで、SUS304の比強度を1として比較した結果を下記に示します。SUS304からの差が顕著な度合いに応じ欄を色付けしていますのでご参考になさってください。
さらにこれもグラフにしたものを下記に示します。