ハステロイの機械加工

 炭素鋼やステンレス鋼同様、ハステロイの機械加工(旋削、中ぐり、面削、研削、穴あけなど)は比較的容易に行うことができます。ただし、いくつかの注意事項があります。

①重切削に耐える加工機械・刃物を選択する

 ハステロイは切削抵抗が大きく、加工機械全体に大きな負荷がかかります。かつては鋳造品を加工する機種にギアの減速比を落とす改良を加えたりしていました。現在はよい刃物が多数出回っていますので、その中でも鋳物などの重切削に耐えられる刃物(切削チップ、ドリルなど)を選択するのが良いでしょう。

②スローアウェイではなく完成バイトを使用する

 前項の通り、ハステロイの機械加工は重切削となりますので、スローアウェイを用いる場合チップの取り付け状態がよくないと、仕上げ面のびれや挽き目の不連続などの外観不良の原因となります。このため、適切な切削チップをロウ付けなどでホルダーに接合した「完成バイト」を作っておくと重宝します。

③切り込み量に応じてバイトの刃先角を調整する

 ハステロイは切削抵抗が大きいため、出来合いの刃先角のままでは希望する切り込み量を得られない場合があります。そんな場合は、両頭グラインダなどで刃先角を鋭角にし送り速度も調整するとうまく仕上がります。

④十分に切削油を使用する

 ハステロイの切削は、切削抵抗が大きい分発熱を伴います。十分に切削油を用い、冷却と摩擦抵抗の低減を図り、変形などの不適合の発生を抑えましょう。

⑤切り粉は混入がないよう回収する

 ハステロイは高価な材料です。特にニッケルなど非鉄材料の価格が高騰する折柄、メーカーに直結した信頼できるルートで回収を依頼すれば、たとえ切削油で汚れたダライ粉(切り粉)であっても高価での買取が期待できます。
 ただし、ハステロイにもいろいろある〜Bシリーズなどでもご説明した通り、ハステロイはちょっとした元素の違いでも異なる材質であると評価され、回収の仕方や識別の状態によってはまっとうな査定がなされず、二束三文になってしまう場合があります。こうした事情を考慮に入れ、丁寧に準備してから加工を行いましょう。

 

ハステロイの切断加工

ハステロイの塑性加工